「廃線」と聞くと日本の寂れた田舎町を想像しますが、ニューヨーク、ニュージャージー州は、古くから鉄道路線が造られてきた歴史があり、おおくの廃線後を見ることができます。
今回は、ニュージャージー州から日帰りで見ることのできる廃線を紹介します。
ニュージャージー州の鉄道の集約地Hoboken。マンハッタンからPATHトレインが来ているので利用したことのある方がおおいと思います。ここからニュージャージー・トランジットがニュージャージー各都市に路線を放射状に巡らせています。そのうちニュージャージー北部に向かってすすむ路線がメイン・ラインとパスカック・バレー・ラインの2本です。
Main Lineは、Hobokenから北に向かい、Passaic、Patersonを通り、ニューヨーク州のSuffernまで延びています。
もう1本の、パスカック・バレー・ラインは、HobokenからTeterboro、Hackensack、Oradellを通り、ニューヨーク州のSpring Valleyまで延びています。どちらの路線も、ニュージャージー北部に住んでいると、何度かは見たことがあると思います。
この2路線、両方共に終点はニューヨーク州ロックランド群です。ニューヨーク州に入ると、運営はメトロノース鉄道になります。日本でも行われている相互乗り入れ方式ですので、乗り換えることなくアクセスできます。両線共に片道1時間程度の近郊列車として利用されています。
さて、この終点のSuffern駅とSpring Valley駅、実はかつては繋がっていたのです。ちょっと古いですが、かつて5大湖のひとつエリー湖とマンハッタンを鉄道でつなげるという計画がありました。この計画によって誕生したのが、エリー鉄道です。この鉄道は現在のニューヨーク・ステート・スルーウェイと並行して走る長距離鉄道でした。当時、エリー運河も建設され、人と荷物の運搬が行われていました。現在は、空輸にシフトしてしまい、鉄道と運河は寂れてしまったのです。現在のニュージャージー・トランジットの線は、一部このエリー鉄道が作った線路を利用していることになります。そして、かつての大動脈だったSpring Valley - Suffern間の路線は、サービスを中止してしまいました。
ただし、現在も当時の遺構がほぼそのまま残っているのです。いつでも再開できるほどちゃんと残っているのですが、ここ数十年間列車が線路を走ったことはありません。
この廃線をSuffern駅からSpring Valleyに向かって辿ってみましょう。
<Suffern>
この街はCMなどの撮影使われるかわいい街です。古くからある街で、長い歴史があります。ここにあるSuffern駅。現在はニュージャージー・トランジットのメイン・ラインの終点ですが、ここから先ポート・ジャービスまで線路は残っており列車の定期運行も行われています。
右の写真は、現在のSuffern駅です。メイン・ラインの終着駅なのに意外と質素なデザインです。駅の前には駐車場があり、このあたりの住人は駅まで車で来て電車でマンハッタンに通勤しているようです。駅の東側にはルート59の沿ってノスタルジックな商店街が広がっています。この中にヒストリック・サイトにも登録されている映画館があります。この映画館、現在も営業中で町の人に愛されていますので、見る価値があると思います。
またSuffernは、人気ドラマ「Sex and the City」では、主人公の実家があるという設定でした。マンハッタンからちょっと離れていますが、この辺りは所得の高い世帯が沢山住んでいます。
さて、廃線です。街の北側に線路の分岐があり、現在使われている線路から東に向かって廃線が延びています。ただし、この廃線は現在も引き込み線として使われているようで、1Kmくらいはとても綺麗な鉄道として残っています。
<Airmont>
Suffernからルート59を平行して廃線は残っています。よってSpring Valleyまでは、ほぼルート59を走ることになります。Suffernを出るとしばらくは住宅地と林の中を線路は延びています。このあたりも現在使われている感じがします。
ルート59とAirmont Rd.の交差点を北に曲がるとすぐに踏切が見えてきます。これが廃線です。でも、このあたりまでは貨物線の引き込みとして使われているようでメンテナンスもちゃんと行われています。
この辺りの工場から荷物を運んでいるのでしょうか?Suffernから結構離れた距離なのにきちんと整備されているのが不思議です。踏切も使われているような感じでした。
数年前までは、このあたりは森が残っていたのですが、現在は宅地化が進んでいます。線路の直ぐ脇に大規模なコンドミニアムが建設されています。しかし、線路はつぶされることがなく残っています。
線路はしばらくニューヨーク・ステート・スルーウェイのすぐ隣を平行して走ります。
<Tallman>
ルート59とSppok Rock Rd.の交差点付近で線路は大きく蛇行します。ここではルート59と立体交差しています。このあたりは草が茂っており、明らかに廃線の色が濃くなります。この立体交差を過ぎると線路はルート59の南側の住宅地の中を走り続けます。
<Monsey>
線路は、再びルート59と立体交差で交わります。ここ辺りは最近大規模な工事が行われ整備されています。本来なら使われていないはずの線路を排除し道路を整備すべきですが、何故か線路はきちんと再構築されています。よく見ると、林の木が折れて線路をふさいでいたりしますが、それを取り除けばいつでも列車が走れそうなほど綺麗に整備されているのです。
この後は、再びルート59の北側を平行して廃線は走っています。しかし、直前までとても綺麗な線路がMonseyの街に入ると急に汚くなります。線路にはゴミが捨てられていてまるでゴミ捨て場です。そして、場所によっては土で線路が埋まってしまっています。一応線路の走っていた場所は残っていますが、知らなかったらただの空き地にしか見えません。そしてルート306との交差点では線路はアスファルトに埋められて、そこに踏切があったことさえわからなくなっています。
<Spring Valley>
ルート59は、Spring valley High Schoolを過ぎると坂になって下ります。廃線は、北側の住宅地の間を走っていますが、このあたりでも場所によって線路が取り払われていたりします。一応ほとんどの場所で線路を確認できますが、列車を走らせる場合は、かなりの復旧工事が必要です。
この辺りからは、線路を横断するとき、必ず大きな「Rail Xing」サインが掲げられています。サインだけ見ると、かなり大きな踏切があると思うのですが、実は廃線の踏切です。サインは新しく輝いています。何故使われていない踏切にこれほど大きく新しいサインが必要なのか不思議でした。実際の踏切はアスファルトで線路がつぶされていました。
さらに進むと、急に線路が復活します。このあたりはSpring Valley駅の近くです。
ここは引き込み線として使われているのでしょう。さらに線路は、北側にも延びています。この線路はかつてSpring valleyからHavestrowまで延びていた別路線です。この路線も途中までは車両基地として使われているようです。
Spring Valley駅は、現在も使われているので、綺麗に整備されています。ここからHobokenまで毎日列車が運行されています。
このように、このSuffern - Spring Valley 鉄道は、かなりはっきりと遺構が残った珍しい廃線です。何故ここまで長期間にわたり線路が残っているのかわかりませんが、現在でも街の開発の際にはあきらかに残す意図が伝わってくるのです。
この廃線の旅は、時間にして2時間程度で全てを見ることが可能です。古き鉄道に興味のある方は是非足を運んで自分の目で見て下さい。発展した町にありながら、住人に忘れ去られている廃線を見ていくと、自分だけタイムスリップしたような気持ちになりますよ。
注意)廃線を見るときは、パブリックスペースからにしましょう。プライベート・プロパティへの進入は避けるべきです。
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映画の都と聞くと誰もが「ハリウッド」と答えるでしょう。アメリカ映画は「ハリウッド映画」と呼ばれ、世界中の人が今でもハリウッドで映画が撮影されていると思っているはずです。
しかし、実はハリウッドが栄える前に映画の都があったのです。それが、なんとニュージャージー州なんです。もう少し詳しく場所をお伝えしましょう。かつての映画の都は、ニューヨーク・シティのマンハッタンの直ぐ隣、フォート・リーという街です。マンハッタンからの日帰り観光も簡単にできます。一番便利なのはレンタカーですが、地下鉄Aでマンハッタンを北上しジョージ・ワシントン橋をバスで渡るとすぐの街です。車でも電車&バスでも片道30分程度でアクセスできます。
いまから100年ほど前、時を同じくしてフランスのリミュエール兄弟とエジソンが動画を撮影する技術を開発しました。エジソンはニュージャージー州オレンジ近辺に研究所を置き発明を行っていました。エジソンが撮影機材を開発すると、映像を撮影してその映像を上映するという産業がアメリカ東部で興りました。これが後の映画産業です。
初期は、風景を撮影していたのですが、だんだんストーリーを俳優が演じるという形態に移行します。当時は、フォート・リーにあるハドソン川沿いの広場や崖で撮影が行われたそうです。これは今で言うロケですね。役者さんは、ブロードウェイの俳優を呼んで演技させました。しかし当時は映画はブロードウェイの舞台よりも低く見られていたため、役者さんは映画に出たがらなかったようです。それでも名前を変えて何人かが映画に出演するようになったそうです。
映画がだんだんと人気を博し、撮影本数が増えてくると、天候に左右されないインドアの撮影場所を創ることになりました。そこで、資金が必要となった映画制作者は次々と映画スタジオを開業します。
1912年にはChampion Film、Victor Filmという映画会社ができます。同じ年にUniversal Film Manufacturing、そう今のユニバーサル・ピクチャーズがメイン・ストリート沿いにオープンしました。1914年にはFox Entertainment(現在の20世紀フォックス)が、スタジオを建設します。1916年には、後にMGMのMであるMetro Pictures、Gとして名前に使われるGoldwyn Pictureがフォート・リーに設立されます。
ここがかつてのFOXスタジオ。現在は印刷工場です。
皆さんは、マンハッタンのすぐ近くのちいさな街がアメリカ映画の発祥の地だなんて知らなかったと思います。私は、実は数年前この町に3年ほど住んでいたのに、この事実を知りませんでした。
当時、おおくのスタッフとエキストラはマンハッタンからフォート・リーに通っていました。地下鉄でアップタウンのフェリー乗り場まで来て、ハドソン川をフェリーで渡り、トローリー・バスでフォート・リーまで来ていたそうです。よって、スタジオは戸ローリー・バスの通っていた道路沿いに建設されました。
そしてさらに驚くのは、100年ほど前のスタジオや撮影に使われた場所が今も残っていると言うのです。
早速、フォート・リーに行って詳しく調べてきました。
フォート・リーのフィルム・コミッションは、映画の都市であったことを伝えるため、歴史的な場所には、詳しい説明が書いてあるボードを設置しています。このボードはデザインが統一されているので、見過ごすことはないでしょう。
このボードには、この場所が映画の都であったことを伝えると共に、誰が何をしたのかなども記載されています。そして、現在では忘れられてしまった俳優さんたちの顔写真も載っていて、誰もが当時の繁栄をイメージできます。
フォート・リー・フィルム・コミッションでは、「Before Hollywood There was Fort Lee, NJ」というDVDの監修を行っており、現在、アメリカと日本で購入できます。このDVDには、当時の写真と当時フォート・リーで撮影され大ヒットした映画3本が収録されています。これを見ると、現在も当時の面影が残っていることがわかります。
<映画のロケ地>
2366 6th St Fort Lee, NJ 07024
スタジオができる前に、映画のロケが頻繁に行われていた場所です。ここは今は公園になっています。場所はFort LeeのMain St.から約1Km、Lemoine Ave (9W)を北上します。Wall st.と交差したら、そこを右です。すると2本目の道の名前が6th st.になるはずです。ここにある公園のあたりが100年前のロケ地です。G.W.グリフィス監督などがここで撮影を行っていたそうです。なんだか時間を飛び越えたような不思議な感覚になる場所でした。
<Fox スタジオ>
2 5th St Fort Lee, NJ 07024
Lemoine Ave.と平行して走る5th st.。前の6th st.の隣の道です。ロケ地から2ブロック北にに行った場所にあります。
ここは、現在印刷工場となっていますので、中にはいることもできませんし、表示ボードもありません。ちょっとわかりにくいのですが、100年近く前に初めて立てられた映画撮影スタジオです。建物自体は当時と同じ形をしています。
<スタジオ・シティ>
2038 Linwood Ave Fort Lee, NJ 07024
フォート・リーのMain St.側にある公園です。このあたり、今は住宅地ですが、100年前は沢山のスタジオが林立していたそうです。426 Main st.にある岩は映画の撮影によく使われたそうで、映画のポスターなどにも登場しています。現在は、アパートの庭にあるオブジェのようです。
<ユニバーサル・スタジオ>
538 Main St Fort Lee, NJ 07024
ここが、元祖ユニバーサルスタジオです。かつてここに巨大なスタジオが広がっていたのです今は大きな駐車場です。近くのボードには当時のユニバーサルスタジオの写真があります。いくつものスタジオと給水塔があり、映画撮影所の面影があります。この敷地の南Jane st.には、現在もフィルム倉庫があります。かつてコダック社が建てたこのビルは、その後テレビ局のフィルム倉庫となり、現在は古い映画のフィルムを保管しているそうです。
<出演者控え室>
2424 1st St Fort Lee, NJ 07024
ここは、住所で言うとかつてのメインストリートなのでしょう。現在はただの住宅地ですが、当時は、1階がサルーン、2階が衣装部屋だったそうです。建物は当時と全く変わっていません。現在は子孫の方が住んでいるそうです。家の裏には広大な丘が広がっていたそうで、様々な映画が撮影されたそうです。